理学療法士の4年制の養成校を卒業後に福祉施設へ就職。ここでは比較的、運動機能が重度に制限された方に関わる機会が多かったので、補装具や、車いすの制作、環境をいかに過ごしやすくするかというような補助に力を入れてきました。

病院での就業経験もほしかったため、整形外科を主に扱った診療所に就職。ここでは外来のみの診療であったため、独自で車の運転や、日常生活が全て自立している方の外来リハビリ、主には整形外科疾患を取り扱ってきました。この診療所に在籍中に、マニュアルセラピーの研修コースへも通うようになり、私の価値観にも変化をもたらすようになります。

福祉施設での経験から

従来から私は効率主義者であり、効果があるかないか判断できないものは好みませんでした。

予防や維持というようなゴールが見えない「作業的な内容」には疑問を感じることもあり、そんな考えから福祉施設では効果の薄い筋力強化や可動域拡大を狙ったアプローチよりは、即効性と変化を眼で追える装具に興味を惹かれていました。

しかし、「作業化」させていたのは業務内容ではなく、自分の知識や技術が足りていなかっただけだったということに気が付きます。

例えば、「この道20年の経験を積んだベテラン」と聞くと、さぞ聞こえが良く聞こえますが、「毎年同じ作業を20年間続けることを、20年間の経験を積んだベテランだ」と胸を張って言えるでしょうか?

答えはNOだと思います。

このことからもっと他の環境も見てみたいという好奇心が芽生え、自分にできることは他にないのかを模索するようになりました。

医療機関での経験から

医療機関に在籍中は、医師の診断結果に惑わされずに、必ず自らで問診と各種検査を行い、利用者の方が来て頂いた時よりも”良くなるように”を心がけて取り組んでいました。

しかし、この価値観は周囲との共通認識ではなかったことに気づかされます…。

医療保険で受けられるサービスは特に成果が上がらなかったとしても期間が過ぎれば終了します(外来の整形外科疾患の場合は最大150日まで)。

極端な話、仮に1回で症状が改善して、その後も満足なら、もうその方は来院しなくなります。結果的に施設に入る収入は落ちるかもしれません。

人によっては、誰に対しても決められたルーティンワークを実行しているというケースも珍しくなく、現在の医療のルールではこのパターンを作り出すのは難しくありません。

また、現在の研究データでは画像診断と症状との関連性はほとんどなく、セラピストが行った検査結果と医師の診断結果が異なることは珍しくありません。しかし、医師の下した診断結果に誤りが明らかであったとしても、職場内の仲が悪くなってしまうことを懸念して黙っているというケースも稀ではありません。

この現状を目の当たりにした時、「医療では医療ができない。正しいと思うことがさせてもらえない」そう感じざるを得ませんでした。

マニュアルセラピーとの出会い

そんな中、私が学んでいたマニュアルセラピー(徒手療法)の研修会での内容は、海外の医療先進国を基準(世界基準)にした価値観、各論文データがベースとなっており、自分の共感できるものに出会えたことに素直に喜びました。

現在、医療保険で受けられる治療は「疾患」に対して行われる治療です。

学校で扱われる教科書でも「この疾患にはこの治療」のような記載がされているます。

しかし、このことを丸暗記したところで成果を出すことは難しいでしょう。なぜなら、診断名がついたとしても、本人が主張している症状と関係しているのかは別の話であったり、そもそも1つだけの問題だけを抱えている人は稀であり、個人によって個体差や生活内容も異なります。

誰でも一定水準の成果を上げられるようにマニュアルを作り、自動化することはどこの企業でも行われていることであり、医療でもそれが行われてきました。

しかしその代償として、個人を見るという観点は薄くなってしまったように感じられます。そんな穴を埋められるのがオート(機械)ではなく、マニュアル(人の手)で行われる検査や、アプローチだと信じています。

疾患ではなく、カラダの構造を把握できていれば、例え治療方法を知らなくても何をすれば良いかのかは浮かび上がるはずです。

フィットネスとの出会い

現在では海外の文化が波及し、日本でもフィットネスがブームとなっていますが、それまでは(今でも)「ウェイトトレーニングをすると身体を壊す」「インナーマッスルが重要なんだ」「カラダが弱っている人には優しくやらないとリスクがある」など誤解された情報が国内で伝わっていました。

結論を先に言うとウェイトトレーニングは、身体の弱っている方や、高齢者に対しても有効かつ安全なアプローチ手段となります。ただし、理論や、正しい方法の理解が必要です。

そのことを理解できない方たちから、新しい物に対して「よくわからない=危険」と判断されていたのではないかと考えています。

運動で言われているリスクとは、「血圧が上がる」「弱った骨に与える悪影響」「ケガのリスク」などが言われていますが、血圧が上がるのは一時的なものでむしろ血圧が上がることで血管内壁のコレステロールや老廃物が洗い流され、高血圧の方や、認知症、脳梗塞の予防にも効果があると言われています。骨に関しては適切な刺激を与えてあげることで骨の再生を促進することもできます。ケガのリスクはあるにしても、手術や薬の副作用に比べればローリスクと言えます。

運動による影響力は筋だけではなく、骨、関節、神経、脳、血管、心臓など各種機関やメンタルにまでも及びます。これほどの効果をもっている薬は他にあるでしょうか?私の知る限り存在しません。

カラダの改善と、健康へ近づくための手段として、また自身の状態を把握してもらう手段として、ウェイトトレーニングとマニュアルセラピーを利用したサービスを提供していきたいと考えています。