仕事の機械化が進み、デスクワーク、知的労働が主になっている現代。

その弊害として、肩こり、首のこりといった症状を日々感じている方は少なくないことでしょう。

肩こりや、首のこりは何で解決しますか?

マッサージや整体でしょうか。そもそも、なぜ肩こりや、首のこりができてしまうのかご存じですか?

今回はそんな「こり」に関するお話と、一般的にお手軽と思われているマッサージで症状が悪化するケースもあることについて紹介していきます。

なぜ筋肉が硬くなる?肩こりや首のこりができるのか?

一般的に、筋肉を酷使すると筋肉が硬くなったり、肩こり、首のこりなどの「こり」が生じるといった意見が多いのではないでしょうか。

しかし、実際には何も筋肉がたくさん使いすぎたせいで、筋肉が硬くなったり、「こり」が生じるわけではありません。

もし使い過ぎが原因で「こり」や筋肉が硬くなっていてはスポーツ選手や、毎日ジムでトレーニングをしている健康的な方は体中「こり」だらけになってしまうのではないでしょうか?

「こり」というのは専門用語ではないので私達はあまり使用しませんが、本人が「こり」という訴えで見られる原因については以下の3点が多く見られます。

  • 逃避性姿勢
  • 筋力の不均衡(動筋と拮抗筋の不均衡)
  • 不安定な関節を保護するため過度に収縮

逃避性姿勢

痛みのポジションを避けるように身体を右や左に傾ける、文字通り痛みから逃避した姿勢です。

例えば左足が痛くて上半身を右に傾ければ、左の腰の筋肉は伸ばされ、右の筋肉は常に収縮した状態になります。この姿勢が長く続くと、例え当初痛かったはずの左足の痛みが治まっているのにも関わらず、右の腰の筋肉は長さが短くなり(短縮)、本来ニュートラルであるまっすぐの姿勢に戻れない、あるいは戻そうとすると、短くなった筋肉を無理やり引き延ばされる力が加わるために痛みを訴えるようになるでしょう。

また、上半身を右に傾けていれば、頭は左に傾けてバランスを取るのが一般的な現象です。

このように、一つの痛みや、身体のトラブルから連鎖的に反応がおき、筋力低下や、筋短縮が生じます。

筋力の不均衡(動筋と拮抗筋)

筋肉は裏と表、曲げると伸ばすの相反する筋肉同士で天秤の関係にあります。

腕の筋肉を例に挙げると、上腕二頭筋(肘を曲げる)を動筋とすると、拮抗筋は上腕三頭筋(肘を伸ばす)になります。

動筋が先ほどの逃避性姿勢で紹介したように短縮してしまうと、その拮抗筋は逆に筋力低下を招きます。

短縮した筋は縮んだ状態のまま伸びれなくなっているので「硬く」感じます。

筋力低下した筋は動作や姿勢維持を行うために過負荷を強いられて血行不良や過緊張(硬くなったり、コリ)を招きやすくなります。

動筋と拮抗筋の関係

・「短縮した筋」の拮抗筋は筋力低下する
・「筋力低下した筋」の拮抗筋は短縮する

不安定な関節を保護するため過度に収縮

捻挫や、脱臼などの炎症が引いて痛みが無くなった後も、受傷時に引き延ばされた靭帯や健は後遺症としてダメージを引きづっているケースは稀ではありません。不安定になった関節を安定化させるために周囲の筋が過剰に働き、硬くなりコリとして認識してしまっているかもしれません。

他にも、加齢で身長が縮むのは聞いたことがあるかと思います。この身長が縮むという現象は主に脊柱(背骨)にある椎間板が若いころに比べて萎んで薄くなっていることが予想されます。

椎間板はほとんどが水分でできていて水風船などに例えられます。その水風船の中に入った水が抜けてしまうと風船も潰れ上に載っている椎骨も沈んできてしまいます。そうなると、椎間板の左右の方向を制御していた靭帯はどうなるでしょう?

椎間板が小さく薄くなったとしても靭帯の長さはそのままの長さを保ち続けるため、相対的に弛んでしまいます。ゆるゆるに弛んでしまった…つまり関節の不安定性となり、周囲の筋肉が過剰に働いて関節を制御するようになります。

すなわち、硬く…もしかしたらコリとして認識されてしまうかもしれません。

マッサージでコリが悪化するかもしれない理由とは?コリを緩めるとどうなる?

コリや筋肉が硬くなる原因を上記で説明しまとめまると以下になります。

筋肉が硬くなる(コリができる)原因

・筋力低下
・筋短縮
・関節の不安定性

次にこれらの原因で硬くなった筋やコリを改善しようとする場合本来アプローチ手段が異なります。

しかし、一般的に原因の検査をしない「格安マッサージ店」「指圧・整体院」では、コリ⇒マッサージ「こってますねえお客さん、つらかったでしょ~?」という下りが始まるのではないでしょうか。

何も知らずに検査なしでマッサージや指圧をはじめた場合どうなるか原因ごとに見ていきましょう。

筋力低下による肩こり・首のこりにマッサージ行った場合

マッサージは筋の緊張状態を緩める目的で主に行われるものとします。

そのマッサージを筋力低下した筋に行ったらどうなるでしょう?

筋力低下とは言い換えると、すでに緩んでしまった筋です。

そんな緩んだ筋肉をさらにゆるゆるにするマッサージを行ったら・・・おそらく悪化してしまうのではないでしょうか。

そして、よく肩こり・首のこりでマッサージで浮かんでくるのが僧帽筋ではないでしょうか?

しかし、この僧帽筋って筋力低下を起こしている人がもの凄く多い筋肉になります。

考えなしで僧帽筋のマッサージはなかなかリスクがありますね・・・

筋短縮による肩こり・首のこりにマッサージを行った場合

筋短縮とは筋の長さが短くなり、筋が伸びない硬い状態です。

短縮筋に対するマッサージは最初のアプローチ手段としては間違っていませんし、もしかしたら即時効果が得られる可能性があります。

しかし、マッサージだけで終わってしまえば、筋の長さは据え置きのままですし、拮抗筋の筋力低下も据え置きであるため、数日の間もなく元に戻ってしまうことでしょう。

関節の不安定性による肩こり・首のこりにマッサージを行った場合

グラグラの関節をやっとの思いで支えていた筋肉を「こってますね~」ともみほぐしてしまうとどうなるでしょう?

仮に筋肉のコリ、痛みがマッサージによって一時的に解消されたとしましょう。それはつまり、関節を支えるために硬くなっていた筋肉を緩めてしまったことになります。支えていた筋肉が緩んでまったら関節の不安定性が悪化する可能性があります。

筋肉のコリの痛みが取れても、関節の痛みが出てしまったのでは、本末転倒と言わざるを得ませんよね。

マッサージはどうやって利用されるべきか?

以上のことから闇雲に「肩こり・首のこり=マッサージ」はリスクの高い選択枝となり得ます。

結論を言うとマッサージ単体での改善効果は高くはありませんです。

そもそも、運動療法の手技単体のエビデンスはどれも高くはありません。

お薬のようにこの症状には「コレだ」といった明確な答えがないのです。

つまり症状に合わせて、検査を行い、結果のフィードバックを行い、いくつかのアプローチを組み合わせてやっと安定した成果を出すことができます。

例えば短縮した筋肉へのアプローチの例を挙げると…

  1. 筋の短縮位でのマッサージ
  2. 筋の伸長位でのマッサージ
  3. 筋のストレッチ
  4. 拮抗筋の筋力強化トレーニング
  5. 簡単な動作練習
  6. 複合複雑な動作練習

このように、基本的な筋へのアプローチを段階的に見てみると、マッサージはローリスクローリターンの一番簡単な位置づけとなります。

マッサージの位置づけに関しては下記の記事でも紹介していますので興味があれば参考にしてください。

整体やリハビリ、トレーニングでも基本は共通していて、簡単でリスクの少ないものから行い、どんどんレベルアップしていく必要があります。

つまり、筋肉へのアプローチとして代表的なものはマッサージ、ストレッチ、筋力トレーニングですが、肩こりや、首のこりがあるケースでは筋肉へのアプローチだけで改善できるとは限りません。

身体のトラブルを引き起こすのは神経系、関節、筋・筋膜、皮膚と原因は様々です。

複合的に関与している場合は一つのアプローチだけでキレイさっぱり取り去るというのはおそらく難しいでしょう。

すなわち、肩こり、首のこりを改善しようとする場合でも、全ての身体の組織、身体全体をトータルで診れる知識と技術が必要になります。

「マッサージ専門」「肩こり専門」「骨盤のゆがみ専門」のような一つのことだけに着目していては本当の意味での改善、自立は難しいでしょう。

実際のマッサージの使われ方

オルサではマッサージは試験治療や、次の治療段階への準備に用いられることが多いです。

試験治療とは、原因をおおよそ特定できた際に試しにリスクの少ないアプローチを行い効果を見ます。①改善②変化なし③悪化のどれかの減少が洗われるので、改善が見られれば次のステップのアプローチへ移行します。

変化が得られなければ、原因の再考察と再検査を行います。

また、マッサージはストレッチの効果を高めるための準備として行ったり、拮抗筋のトレーニングをスムーズにする目的、コンディショニングとしても用いられます。

オルサではパーソナルプランは3種類ご用意していますので、ご興味がある方はご相談ください。